製造業や工業など、発注数の確定を待つことで時間をロスしたり納期に間に合わなかったりすることもあります。発注内示書は、このような事例で必要となる書類です。
内示とは社内で取り扱われる情報の1つです。異動や転勤、昇格、昇給などの人事で活用されている仕組みです。辞令で正式に伝える前に、口頭や電話などで事前に説明することもあります。一般的に、内示は企業内でこのように活用されています。
内示には本来、2通りの使い方があります。労働者を管理する目的の「人事内示」と、これから解説していく「内示発注」です。本記事では、物流において重要な内示発注を中心に取り上げていきます。この内示発注に欠かせない書類が発注内示書です。
発注内示書の書き方や発注書との違い、効力、印紙の必要性などについて解説していきます。
物流の作業管理を効率よくするために、進捗を前倒しして作業に取り掛かることもありますよ。このような場合に内示発注をかけることもあるでしょう。内示発注をかけるためには、発注内示書による手続きを行う必要があります。
発注内示書の正しい書き方や発注書との違いなどについて解説していきます。
発注内示書は、ライン製造している食品加工業や工業部品などを製造している企業などの製造関連を取り扱う業種で、よく取り扱う書類の1つです。確定していないことが原因で定められた納期に間に合わない場合に、進捗を前倒しして作業できるようにするための書類です。
自動車部品を製造しているとしましょう。1ヶ月で100万本の配線を製造して納品しなければならないときに、各部品の発注数の確定を待っていては納期が間に合わないケースです。管理者だった場合、部品の発注数の確定を待たずに作業をスタートさせたいところです。
発注内示書を活用しましょう。社内で内示発注の手続きが認可されると、確定発注を待たずして作業を始めることができます。従業員の時間をロスすることもなく、納期も間に合わせることができます。
内示発注にはメリットだけでなく、デメリットがありますので、よく理解しておく必要があります。
発注内示書による内示発注を行うことで得られるメリットは次のとおりです。
発注内示書によって、発注の確定を待たずして作業を開始できるため、作業の段取りを立てやすくなります。作業開始と終了のタイミングが明確化されるため、従業員の勤務時間を管理しやすくなりますし、時間のロスを防ぐことができます。
納期に間に合わせることができるため、内示発注は効率よく作業を進めるためには必要なことです。
発注内示書に記載された内容が撤回された場合に、被害にあう可能性があるということです。下請法(下請代金支払遅延等防止法)に触れる場合は損害賠償が認められるケースもありますが、内示発注だけで作業にとりかかるにはリスクを生じます。
内示発注が掛けられただけでは作業に着手しない企業も少なくありません。
発注内示書と発注書の大きな違いは、正式な書類かそうでないかです。何か物品を発注する際は、発注書で行います。発注内示書は発注が確定しなくても作業を開始できるようにするための書類です。簡単にまとめると下記のとおりです。
正式な発注の手続きが後日になる場合に必要となる書類
正式に物品などを発注するときに必要な書類
このように、それぞれの目的が異なります。言葉は似ていますが、意味は全く違いますので混同しないように気を付けましょう。
発注内示書の正しい書き方についてみていきましょう。記載すべき項目や正しい書き方などについて解説していきます。
発注内示書の記載すべき項目は下記のとおりです。
記載した当日の日付を記入してください。
取引先の会社名を記載してください。
取引先の住所を記載してください。
取引先の代表者名(担当者名)を記載してください。
自分の会社名を記載してください。
自分の会社の住所を記載してください。
自分の会社の代表者名(担当者名)を記載してください。
何に対する内示発注なのか記載してください。
内示発注にかかる期間を記載してください。
発注内示書のなかに、「正式な発注を後日行うので、本書で先行手続きをお願いします」という内容を記載しなければなりません。定められた様式はなく、それぞれの企業で作成されているところもあります。
記載すべき本文の書き方が分からなければ、後述している見本のフォーマットを参考にしてください。
発注内示書は、発注書と比べて効力は劣りますが、作業を効率的に進めるためには必要な書類です。発注内示書の効力はどの程度なのでしょうか。
システム開発会社(受注者)の例で解説していきます。システム開発において、発注者から発注内示書の要求がありました。この時点で、正式な発注書もなく、契約も交わしていません。発注者からの要望は、発注内示書に金額の記載をしてほしいという内容でした。
上記のケースで、発注内示書の効力はどのようになるのでしょうか。答えとしては、受注者が親会社、発注者が子会社となり、下請法(下請代金支払遅延等防止法)(https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=331AC0000000120)の第4条「親事業者の遵守事項」が適用されます。つまり、発注内示書が発行された時点で、支払いの義務が生じます。
第3条の「書面の交付等」によって、正当な理由があるものについては金額を記載しなくてもよいということが認められます。
「正当な理由」に該当するかどうかは両社協議のもと決定する必要がありますので、今回金額は記載せず、記載するタイミングについては別途協議にて対応していくことが望ましいと判断されます。
発注内示書を発行すると、記載されている内容は下請法が適用され、ある一定の効力を発揮することとなります。
発注書と発注内示書は異なることは理解できたと思います。発注内示書には印しが必要なのでしょうか。この答えについては、契約書に準ずるかどうかが判断の基準です。
発注内示書が契約書に準じるという判断は、発注内示書に金額を記載するかどうかによります。契約内容に、発注内示書の内容が含まれるかどうかが判断の基準となります。
上記のような例で、具体的に何を基準に契約内容に準じるのかが分かりにくいです。金額が記載されているかどうかが目安であることは前述しましたが、金額を記載することが印紙を貼るということではなく、必要となる可能性があるという判断に留まってしまいます。
発注内示書に印紙が必要かどうかは、ケースによって異なるため判断が難しいということがいえます。契約書に準ずる内容であれば、印紙は貼っておくことをおすすめします。
どうしても判断に困る場合は、国税庁が、これらの情報を管理していますので問い合わせてみるとよいでしょう。
発注内示書は正式な発注書とは異なるため、書類としての信頼性は低いです。発注内示書を発行するということは、下請法にも該当する可能性があることは理解しておくべきです。
作業を先行して進めることになりますので、両社でしっかりと情報を共有することが大切です。情報の連絡ミスや行き違いがないよう十分に気を付けましょう。